020:合わせ鏡

洗面所の前で、小さな手鏡を、大きな鏡に向けると、背中の痕が映る。
父も母も、私のことが嫌いで仕方なかったらしい。
蚯蚓腫れのような、雷の閃光のような、罪の残骸が明示される。

私は小さな手の平を合わせ、ずっと祈っている。
もう、誰も父母を傷つけませんように。
この世界で、優しく生きていけますように。
誰も、罪を背負いませんように。

背中が映る小さな鏡の中で、私の背中から小さな羽が生えますように。
少しでも、この世を統べる神様に近付きますように。