2020-06-28 020:合わせ鏡 小説 洗面所の前で、小さな手鏡を、大きな鏡に向けると、背中の痕が映る。父も母も、私のことが嫌いで仕方なかったらしい。蚯蚓腫れのような、雷の閃光のような、罪の残骸が明示される。 私は小さな手の平を合わせ、ずっと祈っている。もう、誰も父母を傷つけませんように。この世界で、優しく生きていけますように。誰も、罪を背負いませんように。 背中が映る小さな鏡の中で、私の背中から小さな羽が生えますように。少しでも、この世を統べる神様に近付きますように。