027:電光掲示板

真夜中のハイウェイを、白昼夢のように進むセダン。
運転席と助手席の窓を挟んで、飛び去るオレンジ。
分かれ道を左に曲がると、内海に向かうらしい。
きらきらと、矢印がゆっくり気味に点滅する。

繋いだスマートフォンから流れる今年のAOR
くるくると、大きな螺旋を描いてインターチェンジ
右上に、ぼうっと光るブリッジ。

ばっちりマスカラを載せた、運転席からぽつぽつと
光の降りる高速道を見詰める焦げ茶色の目。
ハンドルを握るハードジェルの爪先。
金色の細いチェーンネックレスに、
道の両脇のオレンジの光が一瞬載って、後ろに消え去っていく。

朝焼けがみえる前に埠頭について、
真冬の真っ白の息を吐きながら、
保温水筒に入れてきたブラックコーヒーを飲む予定だ。

年上の彼女は、何も言わずに、まだ真っ暗な海を見ながら、
勝手に何かを考え、納得し、何だか気持ちよさそうに
朝日が昇っていく瞬間を愉しむのだろう。

強めの風が、ネックレスと合わせた耳元の細長い金色の
ピアスをしゃらしゃらと揺らすその景色を、
僕は黙って鑑賞し、熱いコーヒーを飲み干す。

帰りの運転は僕が代わり、彼女はやっと、
助手席で短い眠りに就くだろう。

I burn for you.