007:毀れた弓(こわれたゆみ)

背骨に迸る、薄くなった傷跡に触る。
最早、夢に見るだけになってしまった、過去に見た将来を思う。
あの時、背中に少しの違和感を覚えながらも、走ることを止めなかった、自分の決断を幾度となく反芻する。


それでも、走るべきだった。走りたかった。ひとつの黒いけもののように。
あの瞬間に、見えた世界を一秒でも長く、感じていたかった。
そういう何を懸けても、レールの先にあった、想像の容易い未来を毀してでも、
感じたい時間が、人生にはあると、僕は信じたい。